親と子の童謡・唱歌

うさぎ追いしかの山 小鮒つりしかの川
夢はいまもめぐりて 忘れがたき故郷
◆この頁では、春夏秋冬…四季折々の童謡と唱歌の歌詞をお届けします。
なつかしいね…で括られがちな歌ですが、言葉の獲得が最も高い時期の、
幼い子供たちと、そのお母さまやお父さまにこそ歌ってほしいのです。

◆日本の四季の風景や暮しが、 折り目正しい日本語で歌われるのが「唱歌」です。
明治の終わりから昭和の初めにかけて、 その時々の教科書に収められた「文部省唱歌」、 もっと前の「翻訳唱歌」など、 正確にはいくつかに 分類されます。
当時は作詞者と作曲者の名前は明かされず、 今でも不明のままの歌もたくさんあります。
そのせいでしょうか?時代の変遷によって、 歌詞の変更も度々行われているようです。

◆児童文学『赤い鳥』の創刊を機に興ったのが、
大正期の「童謡」。
子供の話し言葉で書かれた、子供のための歌です。
しかしそれは、大人の鑑賞にたえ得る質の高い芸術作品 でなくてはならない、というのが、北原白秋、野口雨情、 西条八十たちの考えでした。
第一流の詩人たちが、子供のための歌に、こんなに 情熱をこらした時代があったのですね。




◆歌詞が文語調で子供には難しいー 現代の生活感覚にあわないー などの理由で、教科書から次々に消された時期もありましたが、今また復活の兆しです。 合唱や歌曲のコンサートでも人気のプログラムですし、ボランティアでデイサービスなどに 伺っても、必ずリクエストされます。歳月を重ねて忘れてしまったことが多くても、幼い時に 歌った曲は身体が覚えていて、皆さん一緒に歌ってくださいます。 遠い日に亡くなった母親や、もう訪れることもない故郷が心に蘇り、涙ぐんでしまう方も…

◆作詞者の著作権保護期間が終了している作品のみの掲載ですが、 真っ白な幼い心に、そっとしのばせてやりたい、きれいな言葉の花々です。 ご一緒に歌い継いでまいりましょう。 では、今月の童謡・唱歌をどうぞ…

古森 朋子 「名詩・名文を声に出して読む会」主宰